♪ T.C.A.会報   2005.1.04 新年号
      合唱曲を一人一人が演出しよう

 あけましておめでとうございます。
 昨年暮はオペラ『カルメン』お疲れ様でした。大成功に終り、「思い切って参加して本当によかった」としみじみ思いました。
 立派な、しかし色調をおさえた舞台装置と照明、そこに一人一人の個性をはっきりさせるのに効果的だった大胆な衣裳。そして何よりもてらいのない正統派の音楽作りをされた小川先生と蒲フィル……。ここまで揃ったらキャストも合唱も燃えない訳にはいきません。皆さんが三幕はどっしりと、四幕は生き生きと動いて下さりほっとしました。演技するって、難しいけど楽しいでしょ? 私が20年以上オペラに出続けた気もちも解って貰えたのではないかしら。でもオペラには莫大なお金と莫大な時間が必要です。ノルマなしどころか団に御礼まで頂いて出演できたことに、改めて感謝しましょう。(残念ながら事情で出演できなかった方も、ずっと練習には出席し続けて下さったこともうれしいことでした。)仏語はまだまだでしたが舞台で自分を解放することの一端はつかめたような気がします。
 「自分を解放?」そう、“見られている意識”は緊張やあがることに結びつきやすいのですが、それをほんの少し快感にでき、自分としての動きを考え、実行に移すことができたかな、と思うのです。
 さて合唱曲の演奏についてはどうでしょう。岡高生がNHKコンクール等でテレビに写ると、一人一人が自分で自分の気もちを表情に出して歌っているのが見てとれます。「あんな恥ずかしいことできないわ!」と言われるかもしれませんが、あれは演技でも何でもなく心から溢れてくるものなのです。自然に溢れてくるの? いいえ。そんな簡単なものではありません。のっぴきならない、その表情でしか表現できない“音”を要求しているからです。
 音程やリズムを正しく取り、大きな声も小さな声も出せるようになったら完成なのではありません。音符と音符、言葉と言葉の間を流れる気もちの表現を、聴衆に届けようとした時、心で思っていることを何倍にも増幅させてほしいのです。
 自らを客観的に演出してみませんか?

 
 (編集担当:T/大島信雄.)